Breadcrumb navigation


導入事例 千葉市様
コールセンターシステムのバージョンアップによる
千葉市役所の市民サービス向上と業務効率化の両立

千葉市は首都圏の政令指定都市として中央区・花見川区・稲毛区・若葉区・緑区・美浜区の6区から成り立ちます。人口は約98万人、世帯数は約47万世帯で、2023年の千葉市の人口動態は、全国では第8位となる5,088人の転入超過がありました。子育て世代はもちろん、全年齢層で転入者が増加しており、引っ越し先として選ばれる都市となっています。一方で将来の人口減少と少子高齢化を見据え、市民のサービスの向上と業務効率化の両立を図るため、NEC VALWAYのコールセンターシステムを導入。AIチャットボットも導入しDX化を進めています。デジタル化にのぞむ自治体の取り組みについて千葉市役所 市民局 市民自治推進部 広報広聴課 課長の大森 信人様(以下敬称略)にお話を伺いました。
コールセンターは市民との最前線の接点

まず、広報広聴課の役割とミッションについて教えていただけますでしょうか。
大森:広報広聴課には2つの役割があります。千葉市として情報を発信する広報と、市民の声をお聴きする広聴の役割です。市民の皆様に早く正確に情報をお届けする一方で、市民の声を聴き、市政にフィードバックする取り組みを行っています。正しい情報の速達性の実現と市民の声を担当する各所管部門に配分・分配して市政に活かすこと。市民と市の間の信頼性と透明性を築き、市民が求める情報を素早く、正しく提供し市民の声や意見を受け入れ、行政に反映させることがミッションです。
市民との接点として重要な役割を果たしているのですね。
大森:そうですね。まさにNEC VALWAYさんにお願いしているコールセンターも含めて、市民の皆様と接する最前線です。
NEC VALWAYにコールセンター業務を委託される前の体制についてお聞かせください。
大森:現在は、市役所コールセンター業務及び市役所と区役所の代表交換業務を委託しておりますが、以前は、電話交換業務を全て市職員が対応しておりました。また、簡単な問い合わせであっても、当時は各課で応対しており、今よりも遥かに多くの問い合わせ対応を全職員が求められていたといっても過言ではありません。一方、市民の方々も担当する各課の電話番号をその都度調べて電話をかける必要がありました。
市民の皆様に対して生じていた課題について具体的に教えていただけますか。
大森:電話の転送や応対で時間がかかる点です。例えばごみの収集についてのお問い合わせのケースです。まず、市民の方がごみの担当課に対して電話をかけ、職員が対応します。しかし、市民の方が続けて住民票についてお聞きしたいとなると、ごみ担当課の職員が住民票の担当課に転送し、転送先の職員が対応していました。電話のアクセス先も市役所、区役所と複数存在しており、市民の方々にとってはワンストップ化がされていませんでした。
お問い合わせの内容によっては、夜間や休日・祝日の対応が難しい点がありました。例えば、月曜の朝一番から市役所を訪ねて何らかの相談をするようなケースです。事前に適切な部署を確認しておきたいけれど、市役所は日曜日の夜は業務時間外のため、電話で確認することはできません。
行政側の課題についてはいかがでしょうか。
大森:現在のコールセンターへの入電もそうですが、ごみ収集に関わる問い合わせが一番多くありました。同じような内容を別の市民の方から受けることが多く、電話をかける側は初めてでも、受ける側は同じような問い合わせ応対が繰り返されるといった状況でした。当然ながら、ごみ以外にもイベントや住民手続きなどに関すること、市税や健康保険に関わることなど様々な問い合わせに対応することが必要でした。
コールセンター導入後の実績値ではありますが、令和4年度のコールセンターの受付件数の総計は259,300件でした。1件あたりの平均通話時間は2分50秒となっています。一概には申し上げることは難しいのですが、これまではこうした件数の問い合わせ対応を各課の職員で対応していました。職員への入電件数が多いため、対応に時間が割かれ業務が中断し、手戻りや思考が分断される影響など負荷の面で課題がありました。中にはクレームの一次対応で職員がストレスに直面するケースもありました。
平成24年にNEC VALWAYのコールセンターを導入

課題解決の経緯について教えてください。
大森:千葉市が初めてコールセンターを導入したのは平成19年です。その後、平成24年からNEC VALWAYさんにお世話になっています。そうした中、ごみ収集の問い合わせのチャットボットのサービスが開始され、現在ではAIチャットボットのサービスも開始されています。
だんだんとバージョンアップをされていますね。
大森:そうですね。先ほど職員の負担の話がありましたが、さまざまな環境変化の中で業務量や業務の質が変化しています。市民の皆様からの問い合わせだけでなく職員の負担増に対しても対応が必要でした。平成24年に当時のNECさんのコールセンターシステムを導入した際、本庁舎代表交換機能を集約し、問い合わせ窓口のワンストップ強化を行いました。さらに平成29年には、区役所の代表交換業務をNEC VALWAYさんに引き継ぐことで、それまで交換業務を担っていた職員の手から離れ、大きく業務負担が軽減されたのではないかと感じています。
課題解決の優先事項は市民サービスの向上と、それに付随する職員の負担軽減、業務効率化でした。職員の負担が減ることで、さらに別の仕事で価値を提供し市民サービスの向上が期待できます。単純にコールセンターの設置は市民サービスの向上のみならず、電話対応に割いていた職員や時間のリソースをさらに相乗的に別の行政サービスに貢献できる点が大きいと思います。
NEC VALWAYのシステムを採用した理由について伺えますでしょうか。
大森:入札の結果による導入ですが、数多くのサービスを提供されてきた実績や蓄積された経験に裏打ちされたサービスが評価できました。長年にわたり築かれてきた経験、サービスの実績は大きかったですね。豊かな知見をお持ちで、我々のニーズをしっかりと把握いただけています。
コールセンターによるAIチャットボットの導入や、さらに最近始まったチャットボットの有人化もご提案いただき、市民サービスが向上しました。コールセンターをはじめとして、市民のニーズに応えるためには多様なサービスチャネルが必要になってきています。
「市民に時間を返す」導入効果は市民サービスの向上と業務効率化

具体的な導入効果について教えていただけますでしょうか。
大森:まず、市民の皆様の目線ですが、電話のアクセス先が一本化され、ワンストップ化が実現した点です。今までのように転送に時間がかかったり、たらい回しにされたりすることが減ったのではないでしょうか。加えてコールセンターのオペレーターの方は幅広い知識を持っています。CTI(Computer Telephony Integrationの略。電話とコンピュータシステムを統合すること)によって、PCの画面上を確認しながら情報提供も可能です。複数のお問い合わせ対応もワンストップで済むため、こうした点も時間短縮になっていると思います。
お問い合わせに対する応対品質も向上したのではないでしょうか。これまでは各課の職員が対応していましたが、応対にばらつきがありました。コールセンターではプロであるオペレーターが、高水準で安定した接客品質を提供してくれています。
我々は「市民に時間を返す」という言葉をよく使いますが、お問い合わせをコールセンターに集約し、知識やノウハウを蓄積したプロのオペレーターが対応することで、市民の方が問い合わせに要する時間も短くなります。我々も業務の効率化を図ることができているため、お互いWin-Winになっているのではないでしょうか。こうしたお陰でサービスレベルについて数多くの市民の皆様からの高評価をいただきました。
行政面の業務効率化についてはいかがでしょうか。
大森:コールセンターがあるおかげで業務の平準化が実現できました。例えば、自治体には数年ごとの人事異動があります。年度当初は新しい職員より経験豊富な職員に問い合わせの応対を任せる傾向があります。コールセンターによってこうした職員の負担を軽減できている点は大きいですね。
加えて、属人的で散逸しがちだった知識や知見が集約する方向に向かっている点です。コールセンターには問い合わせと回答が集約され、蓄積されていきます。こうしたデータを市政へ活用したり、FAQとしてホームページへ反映させたりすることができます。さらにAIチャットボットへ展開し、市民サービスのバージョンアップにつながり、良い循環が生まれてきているのではないでしょうか。
NEC VALWAYさんからは日々の連絡や情報共有のみならず月報を頂いています。そうした報告の中から、問い合わせが多いものは、担当部署にフィードバックしたり情報共有を行ったりしています。
目指すのは市民の方の自己解決のサポート

問い合わせの自己解決をサポートするAIチャットボットについて教えていただけますか。
大森:我々は何かを調べる時に検索エンジンにキーワードを入力して調べますよね。今後はこうした市民の皆様が自己解決できる方法の充実が大切だと考えています。自己解決のチャネルは時間や場所の制約を受けずに即時に問題を解決することが可能だと思います。
千葉市ではNEC VALWAYさんの協力を得て、AIチャットボットを導入しました。24時間365日問い合わせを行うことができるので市民の方へのサービスレベルは上がったのではないでしょうか。平日の夜間や閉庁日も市民の方が問い合わせできるので、導入効果は大きいと思います。さらに内部の職員も同じように使うことができるので、新しく異動してきた職員も自分の業務を理解することにつながると良いと考えています。
AIの精度に不安を感じる方もいるかもしれませんが、チャットボットの回答精度は導入当初から改善されています。また、NEC VALWAYさんにはシナリオ型と一問一答型の2つのパターンのハイブリッド型をご提案頂いて導入しました。シナリオを辿っていけば回答にたどり着くパターンと、シナリオにないことに対してキーワードを入力して探していくパターンがあります。2つのパターンを組み合わせることによって、サービスレベルが上がったと考えています。
人口減少を見据えた行政サービスの維持にはDXが必要

今後の展望について教えてください。
大森:2024年時点では千葉市の人口は増加しています。しかし日本の総人口が減少する中、今後は千葉市も減少段階を迎えるでしょう。税収の減少も想定される中、現在の職員数の維持はのぞめません。職員数が減少する中でも行政サービスのレベルを下げることはできません。人口減少と税収減少の状況下で行政サービスのレベル維持を考える必要があるでしょうね。
そうなると新たなサービスチャネルを増やしていくことが必要ではないでしょうか。広報広聴課としても情報発信のサービスやコールセンターを含めた広聴機能は、デジタル化、DX化を進めていかなくてはならないでしょう。職員数の減少は、将来的な大きな課題ですが、これからの時代の課題解決の手段はDXではないかと考えています。
個人的には自治体のDX化には遅滞なく取り組む必要があると思います。AIチャットボット然り、生成AIの活用など新たなテクノロジーの活用は、市民の方々により良いサービス提供すると同時に自治体の業務効率化に寄与できるのではと考えています。